眩人 松本清張 中公文庫


この作品は単行本で発売されてすぐに読み、面白いと思いましたが、いかんせん宗教、歴史に疎く、未消化の状態でそのまま放置していました。

その後、空海や奈良の歴史に関心を持つようになり、30年振りに再び読み直しました(今回は文庫本)。
今、読み直しますと小説としてはやや荒削りの感も有りますが、日本に伝来された仏教がどのような過程を経て来たのかを知る上で貴重な作品です。

当時の中国では道教以外に、ゾロアスター教ユダヤ教、仏教、キリスト教景教)、マニ教イスラム教など様々な宗教がそれぞれの地域部族の言葉、習慣によって変化し、東西の交易を経て伝わっていたのではないかと想像します。

著者は玄纊を権力欲の強い詐欺師、色事師のように著していますが、これは権力、宗教嫌いの著者が大衆受けを狙ったストーリーにしたもので、私には空海の先達と言っても過言では無いくらいの優れた宗教者のように思えます。