趣都の誕生 萌える都市アキハバラ 森川 嘉一郎

著者は大学院で建築学を学ばれ、専門は「建築意匠論」だそうで、都市景観、計画として「アキハバラ」の変化を解釈している興味深い本です。

著者の「官」→「民」→「個」と移譲された主導主体が、行政や大企業資本による開発が介在しなかったこの「アキハバラ」を「オタクの趣都」として誕生させたとの解釈は私も同感です。

敗戦の中から立ち上がろうと自分の手持ちの物を持ち寄って売ったのが戦後の秋葉原の始まりでした。
駅前に集まっていた露天商は戦前は学者や実業家、軍人だった堅気の人たちで、その後もこの地は山手線の駅前では風俗業(キャバレー、パチンコなど)が無いという珍しいカタギの街として発展してきました。

最近の「電気街」から「オタクの街」への変化に私は途惑いを感じていましたが、そのことも解説してくれています。
言われてみると、秋葉原で電子部品を集めてラジオ、無線、オーディオ、パソコン等を組み立てていた科学好きな少年たちも実は「オタク」だったかもしれません。

青果市場(通称ヤッチャバ)跡地の再開発、つくばエクスプレスの開通、Yカメラの出店など、行政、大企業資本(?)の参入によって更に大きく変貌する秋葉原

今の秋葉原が香港の九龍城砦のように消滅させられるのか、「オタクの趣都」として生き残るのか、とても関心が有ります。